星の挽歌/ラウール大公宛書簡主、書簡、補足(4)

写影:共和暦25年2月5日
訳:バート・アネキス

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【回想録、帝暦33年 春、日付無し】

 一つ仕事が終わり、結局旧王国派は私を*1一の仮想敵とすることを断念したようである。喜ばしいことである。彼は単純に思慮が足りないだけのどこにでもいる不満足者なのだと思うにつけ、貴種とは生き残りにくい世界であると感じる。今や自分もその創始者であるらしいから他人事でもない。
 が、今この時代に私がいなくても誰かが同じ判断をして同じ結論に到り、手段の差異はあれど同じ結果となっているはずである。内戦にならぬだけ私は配慮はしている。結局のところ彼に甘い夢を吹き込んだ連中の望みが何かを考えれば単純に旧い血の復興などということではないことくらい分かりそうなものであるが。
 頭目を*2のような形で衆目分かりやすく叩き潰したために旧王国派は遠からず愚痴をこぼすだけの寄り合いになるはずである。

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*1 統一の敵
旧王国派とされる貴族達の名前の詳細な記録はないが、急速にラウール公が始祖帝の異母兄弟の粛清を進めたことで、結束は産んだようである。

*2 あのような形
この帝暦33年という年にはユヒト王子の公開暗殺という大きな出来事がある。刑死は旧王族には殆ど適用されないのが当時の不文律であり、自裁はラウール公が許さなかった。そのためユヒト王子は特権階級にありながら大衆の眼前で弓射の的として追われ射殺されるという最大級の侮辱と屈辱を押しつけられて死ぬ。享年38歳。