星の挽歌/イダルガーン大公、日々録、帝暦百年以前(4)

写影:共和暦25年2月24日
訳:ミカ・エリン

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【帝暦40年 10月10日】

ミシュアル。晴れ。書簡全て淑人へ回すよう、再度言う。来客無し。

 陛下がラウール公を伴い帝都へご帰還になるため、御出立の見送りに出る。新年にはザクリアで大祓礼があるが、それは構わぬとの言葉を頂戴する。母の墓参もあるゆえ二年に一度は来よう、伯父はくふもいつまでも息災でと仰る。まだうっすら覚えておられる漢語で、発音が若干胡語寄りではあるがお気遣いは素直に嬉しく思う。
 淑人も共にザクリアへ戻っていった。あれの姿形はよく*1弟に似てきたと思う。*2も懐かしそうにしている。そういえば泉は元々ミシュアルの馬家の女媽女中であってミシュアル解放戦の頃合いには馬梁桓の元にいたらしい。
 泉には淑人で良いのかと聞かれているが、淑人以外に星に感応する者がおらぬ。殆どは私から流しているとはいえ、受け取る側にも器は要る。今後帝都とミシュアルで遠く離れるため少々面倒ではあるが、とにかく星観をせねば伊の家門に関わる。致し方ない。

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*1 三弟
 イ・ハイフォン侯爵。帝暦四年春に刺客に狙われた始祖帝を助け、自身は死亡した。元々はミシュアル公時代の始祖帝の秘書であったらしいが、その頃の功績については不明。

*2 泉
 ランチェン(梁泉)。イ・ハイフォンの愛妾であったが死後、一族の長老であったイダルガーン公の妻となる。公の二人目の正妻であった明碕の死後に三人目の正妻となる。イ・シューレンの母でもある。